【体験談】私がシンガポールで生活してわかった話-1型糖尿病患者が一歩踏み出す勇気-【IDDM】

 

海外で生活してみたい、海外旅行へいってみたい、そう思っているIDDM患者の方はいませんか?

 

しかし、「海外にインシュリンはあるの?」「病院は?」「食べ物は?」といった不安があると思います。

 

かつて私は、シンガポールの日本語学校へ就職し、現地に住んでいました。しかし血糖値が安定せず、結果としてわずか3ヶ月で退職し帰国しました。

 

この私の経験が、海外での生活を考えているIDDM患者の方へ、少しでも役立てばいいなと思い、シンガポールで生活してわかったことを紹介していきたいと思います。

 

海外生活や海外旅行を考えている方、ぜひ参考にしてみてくださいね。

 

インシュリン薬について

1番大事なこと

 

1番大切なことは、就職面接の際、面接官に自分がIDDM(1型糖尿病)であることを必ず伝えるということです。

 

私たちIDDM患者は、周りの方々の理解と助けが必要です。「病気が原因で落とされたらどうしよう」と不安に思う気持ち、とてもわかります。

 

しかし、正直に伝えなければ後々、様々なことであなた自身が困ることになります。

IDDMだということを面接官に伝えることは、非常に勇気がいることですが、しっかり伝える。

 

自分自身を理解してもらうのです。これも面接の1つだと思いましょう。

 

それに案外、人はみんな優しいです。病気が原因で面接に落とされることはありません。

あったとすれば、「そんな企業こっちからお断りだ」ぐらいの気持ちで臨みましょう。

 

もちろん私も就職活動の際、自分がIDDMだということをバッチリ伝えましたよ。

 

すると、「詳しくわからないからどんな病気で、組織としてはどんなサポートが必要か教えて欲しい?」といった思いやりのある言葉が返ってきました。

 

心がほっこり、一気に面接の緊張が溶けたような心地でした。

薬があるか、調べる方法

 

では実際にどうやって調べたらいいのか。答えは ⋯

 

「現地の人に聞く」

 

これが一番てっとり早いです。おまけに正確な情報を得られます。

インターネットのみで調べた情報を、鵜呑みにするのはとても危険です。

 

事前に就職する企業にお願いして、現地に同様または変わる薬があるのか調べてもらいましょう。

 

このように周りの支えが必要不可欠。

だからIDDMを隠さないことが大切です。

 

私の場合、学校側に使っているインスリンや注射針、血糖測定器の正式名称をメールで送り、調べてもらいました。

 

現地の方に直接聞くことで、確実な情報を知ることができます。

インシュリン注射の持ち込みについて

航空会社へ問い合わせる

 

次に、飛行機へのインシュリン注射の持ち込みは可能?

これも自分が利用する航空会社に問い合わせて直接聞いてください。

「面倒だから」とネットで調べることは絶対に避けたほうがいいと思います。

 

確実な情報でないと、自分が困ります。

 

私はシンガポール航空を利用したので、この航空会社について紹介します。

 

シンガポール航空は、インスリンの機内持ち込みOKです。

また、複数本のインスリン注射を持って行く場合には、飛行機内の冷蔵庫で保管してくれます。

 

離陸時には、インスリンにドライアイスとタオルをつけて返してくれました。とても丁寧な対応。

 

シンガポールは、平均気温が30度を超える国なので、インスリン保管にはありがたいサービスです。

また、機内食を糖尿病食に変更できます。

 

電話でインスリン注射の持ち込みを確認した際に、「事前にお伝えいただければ機内食を糖尿病食に変更できますが、どうされますか?」と聞いていただきました。

 

これはネットだけで調べていれば、得られてなかった情報だと思います。

入国の際に気をつけること

 

シンガポールに入国する際、特に問題なく入国できました。

しかし、インスリンについて、「なんだそれは」と聞かれることもあると思います。

 

私は主治医に「1型糖尿病でインスリン注射が必要」という証明書と病院への紹介状を書いていただき、その証明書を常に持ち歩いていました。

 

実物があれば一目瞭然なのですが、病院に提出したため現在手元にありません。

写真をとっておけばよかったと後悔しています。

 

海外旅行の際も万が一に備えて、主治医に証明書を書いていただき、携帯することをオススメします。

 

いざという時のお守りです。

生活してみてわかったこと

日常

シンガポールは、高温多湿です。体にまとわりつくようなムシっとした暑さです。

 

基本的にエアコンは、1日中付けっ放し。だから室内でのインスリンの管理は特に問題なしです。

 

しかし、外出する際には注意が必要です。外の気温は、ほぼ30度超えています。

 

インスリンは高温に弱いですよね。

 

私の場合、長時間の外出の際は、ペットボトルを凍らしたものを保冷剤代わりにして持ち歩いていました。

 

溶けると飲めるし一石二鳥。

仕事

 

私の場合、海外という未知の場所、そして新しい仕事という環境で血糖値がかなり乱れました。

 

日本にいた時は、食後血糖値が250mg/dlを超えることはそう頻繁になかったのですが、シンガポールに行ってからは空腹時血糖300mg/dl超えを連発していました。

 

もう死ぬんじゃないかってずっと思っていましたね。

 

血糖値のことで頭がいっぱいになって、1日中血糖値に縛られていました。

それがストレスになって、また高血糖を引き起こす。

私はこれを高血糖スパイラルと名付けていました。

 

まとめるとこんな感じです。私はこの「高血糖スパイラル」から抜けきることができず、専門医との話し合いの末、帰国を決意しました。

 

不思議なことに帰国した途端、血糖値も落ち着きました。

ほんと、ストレスの影響ってすごいです。

 

痛感しました。

食べ物

シンガポールは外食文化です。

ホーカーズ(日本でいうフードコート)と呼ばれる屋台では、4SGD(320円)ほどで1食を済ますことができます。

(SGD=シンガポールドル,1SGD=約80円,現在のレートはコチラ

私が撮影したホーカーズの写真です。

 

シンガポールは世界でも有数の物価が高い国です。

そんなシンガポールで1食320円で済ませられるなんて安い!と思うかもしれませんが、皆様に残念お知らせがあります。

 

ホーカーズのお手軽グルメは基本的に炭水化物中心の濃い味付けです。もちろん栄養表示もありません。

 

カーボカウントは自分の感覚との勝負です。

 

加えて、日本では見かけない調味料も使われていることでしょう。

例えばこんなもの。

これはフライドホッケンミーと呼ばれる、人気のシンガポールグルメです。

どうですか?味、濃そうでしょ?

この量ならインスリンこれぐらいかな?

 

「ブスッ」

 

2時間後。

食後血糖値:380mg/dl

 

・・・・。ため息。

 

なんてことがしょっちゅうありました。

見事に私の予想を裏切ってくれます。

 

しかし、これは「安く済まそうと思えば」という話です。

ホーカーズには豚やチキンもあります。しかし、ちょっと高い。

麺類が1SGD(約80円)からなのに対して、お肉は最低7SGD(560円)からです。

少し高いお金を払って低糖質な食事をするか、安い値段でド炭水化物を食べるのかは自分次第でした。

自分の食べたいものを食べて、計算して注射して、結果が悪ければ次はインスリン量を増やして食べてみる。

徐々に調整して、最終的にはぴったり、なんてこともありました。ぴったりだとハッピー。

 

IDDM患者は毎食トライアンドエラーの連続です。

毎日、毎食自分の体と向き合う。

自分の体に話しかける。

 

ちなみに私のオススメの食べ物は、骨肉茶(バクテー)です。

骨肉茶(バクテー)はシンガポールのローカルフードで、スペアリブを漢方で煮込んだものです。左にあるのはニンニクと唐辛子。

骨肉茶をWikipediaで調べる

ほろほろでお肉が柔らかくて美味しいです。にんにくマシマシで食べるのが私流の食べ方。

値段はホーカーズなどで食べると4~6SGD(約400円)、有名な骨肉茶(バクテー店)だと最低でも10SGD(800円)以上はかかります。

 

糖質をほぼ含んでないので、シンガポールではよくお世話になっていました。

 

思い出の味です。

病院は?

シンガポールの日本人病院

 

定期的な通院は?英語で話すのはハードルが高すぎる・・・と思っている方。

 

安心してください、大丈夫です。

 

シンガポールには日本人が経営するクリニックがいくつかあります。

もちろんすべて日本語でOK。

 

私は日本人会クリニック JACSに行きました。

なぜこの数ある中からここを選んだのか。

それは、このクリニックの日暮真由美 医師が糖尿病の専門医だからです。

この先生を見つけた時、すぐに予約し、ここに行こうと思いました。

 

その時期私は、原因不明の高血糖が1ヶ月ほど続き(例の血糖値スパイラルなるものです)、精神的にも体力的に疲れ切っていました。

そんな時期だったのもあり、日暮先生の「1型なんですね。夢を叶えて海外なんて素晴らしい。頑張ってるね」という優しい言葉に、泣きじゃくったのを鮮明に覚えています。

 

ええ年したオッサンが大きな声で恥ずかしい(笑)。思い出すだけで体が熱くなります。

 

「高血糖の原因がストレスなのか、インスリンの量が足りてないのかはわからないけど、1型患者は毎日生きてるだけで頑張ってるから、好きな選択をしたらいいと思います。しんどいなら日本に帰ればいいし、残るなら残って見るのもあり。どっちもあり。どっちも正解。私は1型の人が毎日一生懸命に過ごしているのを見ていたら、応援したくなる。」

こんな言葉をかけられて、私、号泣。

一生分泣きました。

精算時、受付のお姉さんの「この人何があったんやろ」という顔は今でも忘れられないですね。

 

正直、日暮先生からこの言葉をいただくまでは、仕事をやめて帰国するという選択肢はありませんでした。

 

自分の本当の気持ちを殺して無理をしようと思っていました。

 

しかし、先生の言葉を受けて「帰国することも勇気」これから何十年と生きていく上で、今無理をして体を壊すことがベストではないなと考え、帰国を決意。

 

先ほども書きましたが、帰国後血糖値はすぐに安定しました。

診察料とインシュリン代

診察料は採血なしの診察のみで、112SGD(約9000円)でした。

保険がきかないので、医療費は全額自己負担です。

正直、高いと思います。ここに採血を加えると200SGD(約16000)ほどになりそうです。

 

インシュリンも処方してもらえます。

値段は日本と変わらず1本2000円ほど。

しかしこれも、全額自己負担です。

 

日本と比べると、毎月の医療費はかなり高くなります。

おわりに

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。

 

いかがでしたか?

 

本記事が「海外で生活してみたい」「海外旅行に行きたい」と思っている、IDDM患者の方のお役に立てば幸いです。

 

悩んでいる方。夢を叶えるため、勇気を出して、海外へ飛び立ってみてください。

私たちIDDM患者にできないことはありません。

そこで待ち受けている様々な壁を、大声で笑ったり、時には涙枯れるまで泣きじゃくったりして超えていってください。

その経験はあなたを、今の自分より数100倍も、数1000倍も、成長させてくれることでしょう。

 

行ってみてダメだったらいつでも帰ってこればいいんです。

 

「だから、おとなしく日本に居ればいいって言ったのに。」

 

私は仕事を辞め帰国して、精神的にも体力的にもふらふらの時に、親戚に言われました。

 

でもそんなこと言う人は一部です。多くの方が、笑顔で「おかえり」と迎えてくれました。

元気づけるために呑みの誘ってくれたり、仕事を紹介してくれたり、と。本当に周りに感謝です。

 

結果的には、私のシンガポール生活は、もののみごと惨敗に終わりましたが、学んだことが多すぎます。

間違いなく今までの人生で1番、経験、経験、経験の毎日でした。

 

 

自分なりの生き方を見つける

 

 

いつか来るそんな日を夢見て、今日もその生き方を模索中です。

 

 

さて、今日も忘れず。

 

 

「ブスッ」

 

 

痛っ・・・

 

 

 

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それではまた。

 

いつも誰かのお陰様☆ 

 

 

 


masa☆(くるぷぴぃ)

Since 2015.7 1型糖尿病(IDDM)患者